アドレス変更と「当たり前」について考える


9/22、Dポの歴史に一つの節目が刻まれました。
メールアドレスを自由に変えられるようになったのです。
地味ですが、実は非常に重い意味を持っています。

アドレス変更の自由化を求める声は、以前から多く上がっていました。
「気分転換に変えたい」というものから「迷惑メールに困ってるから変えたい」という切実なものまで、
そして決定的なものが「他社のケータイは自由に変えられるのに、なんでDポのは変えられないんだ?!」でした。

アドレス変更ができるのは「当たり前」であり、これができないことは「劣ったこと」と見なされたのです。
そこで当時のDポユーザー強硬派は「むしろアドレスは変更できる方が間違っている」という論陣を張りました。


まるで他人事みたいに書いていますが、 H"に毎月数百通のスパムとウイルスが殺到しているれさくが2001年当時書いた文章。


さあ、今の気分は70年代の中国です。
三角帽をかぶらされて
「私はメアド変更不可にこだわった負け組みです」というプラカードをかけられて
演台に立たされ
転向したDポ当局一派はそれを遠巻きに眺め
Dポ人民達からは容赦ない罵声を浴びせられ
ちくしょうっ!オレはっ!オレはっ!
ざわ・・・  ざわ・・・

そんな光景が目に浮かぶようです。
カイジかよ!

話を真面目に戻して・・・。

ウイルスとスパムメールが殺到し、架空請求などの詐欺、脅迫まがいのメールまで飛び交う現在、
メールアドレス変更は必要不可欠なものに「なった」と思います。

ここがポイントです。

他社携帯は、今日のこの状況を予測した上で、アドレス変更を昔から認めていたのでしょうか?
そうは思いません。

結果として「アドレス変更が必要不可欠な状況」にぶつかっただけであり、Dポは後から現状を追認した。
そういうことだと思うのです。

「メールアドレス変更できるのは当たり前」とは、切り離して考えるべきでしょう。


何故こんな、一見するとひねくれた考え方をするのか?
それは私が「当たり前」について危機感を感じていたりするからです。
決してアドレス変更から話題をそらすためではありません(汗)

アドレス変更と並んで、Dポが携帯に追随したものがもう一つあります。
「公式サイトの月額課金制」です。

とはいえ、今までのDポにも「公式サイトの月額課金制」はありました。
ただし、システムが違います。

H"LINKの「公式サイトの月額課金制」は、「その月のみ有効な課金」でした。
つまり10/5に「月額100円」のサイトに入ると、10/31までサイトを利用できて、情報料は100円。
しかし11/1になるとサイトは使えません。もちろん課金もされません。
再び課金確認画面が出て、再度課金されると、11月末まで使える。
そんなシステムです。

公式サイトを使わない私ですが、一応この程度の話は知っていました。
その後・・・電波の杜は扱うネタを携帯全キャリア対応した訳ですが、そこで驚いたのが他キャリア携帯の「月額課金制」でした。

i-mode、EZweb、Vodafoneの「月額課金」は、ユーザーが自分の意志で解除しない限り、無限に自動延長されます。

これを知った時には震え上がりました。
「サギじゃないのか?!」「携帯ユーザー達は疑問に思わないのか?!」などと思ったものです。
「月額課金」というのだから、当然その月についてのみの課金じゃないのか?(H"LINKのように)
サイトを使っていない月も、勝手に課金されるなんてことがあっていいのか?
サイトに登録したことを忘れてるユーザーなんて山ほどいるはずですから、もう巻き上げ放題じゃないのか?
もうホントに地動説を初めて知ったよ、ってなくらいの衝撃があった訳です。
少なくとも私は。

しかし・・・月額課金は、これが「当たり前」なのです。

過去何度か登場した「台湾S氏を紹介してくれた人」の話によると−。
・携帯の月額課金方式について、クレームは皆無
・Dポ式の月額課金については“勝手に解除するな!”“不便だ!”等のクレームがしばしば寄せられる
・コンテンツプロバイダからも、Dポ式月額課金は早く“改善”してくれとの声が多数寄せられる

何が正しいか、悪いかは置いておいて、これが現実−「当たり前」−のようです。

そしてDポはこの「当たり前」に対応しました。
AirH"PHONE公式サイトについては、携帯他キャリアと同じ月額課金方式を採用したのです。




さて、何が正しいか、何が間違っているか・・・・
直ぐに答えが出せなくても、少なくとも、少し考えてみませんか?
アドレス変更についても、同じ事を言いたい訳です。



さらに話を展開させてしまいます。
公式サイトと情報料回収システムの存在により、「携帯電話単体で情報料が課金される」という「当たり前」が確立されました。
もちろん何でもかんでも課金されてはいけませんから、キャリアそれぞれの方法で課金認証し、情報を管理し、最終的には通話料と合わせて請求する、というのが一般的です。

しかし多くの人は、ここまで考えていないのかもしれません。
頭に入っているのは「携帯電話単体で情報料が課金される」という部分だけなのかもしれません。

ここにつけ込んだのが、今大流行している「架空請求」犯罪です。

私もネタ用に用意した各キャリアの端末で、怪しいサイトを踏みまくってみました(笑)。
いきなり「あなたの個体番号〜を登録しました。何日以内に何万円を振り込んで何たらかんたら・・・」という画面が出たりするのですが、 その「個体番号」と称して表示されているのが

UserAgent。

もう爆笑です。
子供の落書きみたいなものです。

で・す・が・・・・この「子供の落書き」に震えおののく人が何十万人もいて、総額何億もの金が振り込まれてしまうのも事実です。
多くの人の頭にインプットされている「携帯電話単体で情報料が課金されるのは当たり前」という部分が、大いに利用されている訳です。
それを考えると暗澹たる気分になります。

今日のこのような事態を迎える前に、ユーザーにもっと考える機会はなかったのか?キャリア側にも考える機会はなかったのか?
そんなことを思ってしまうのです。

何も考えずに「当たり前」を「当たり前」として受容してしまうと、どんなことになるのか。

皆が皆、高度な知識を持っているとは限りませんし、それは難しいでしょう。
とはいえ、考えることはできるはずです。
分からなければ調べる、聞く、助けを求める・・・・いろいろとできそうです。
そしてまた、聞いてくる人、助けを求めてくる人を救えるキャリアや社会システムがある。

そんな「当たり前」が確立できると、とても幸せだと思います。